コラム~阿難の耳~

リピーター獲得と売上向上

葬儀社のチラシを比較すると、これでやっていけるのかと思えるようなパック(一式)価格を掲載しているものをたまに見かける。だいたいがその価格ですべてできるかのような表現なり書き方をしている。しかし、そこで葬儀をやった人に聞くとほとんどの人はその値段では出来なかったとの答えが返ってくる(その理由は色々あるようだが!)。しかしよく読めば嘘は書いてはいないが、葬儀を知らない一般のひとにはなかなか分かりづらいのも確かである。一生に何度もない葬儀を、よりよいものにしたいと考えれば各社ごとの比較検討も必要になってくるだろう。

最近同窓会でしばらくぶりに会った都下に住む友人は、ここ1~2年のうちに両親を相次いで亡くし、少人数だが葬儀を共にA社に頼んだという。自宅のすぐ並びに関東一円にホールを展開しているS社という「家族葬パック」を売りにしている大手葬儀社があるのだが、彼はS社ではなくA社を利用したという。なぜなのか。

彼がA社を支持しているのは、「説明が丁寧で、一つ一つが納得出来るから」と言う、なるほど彼の言うとおり、プロである担当者がこちらのニーズを汲み取り、適したものを勧めてくれれば、安心できる。語弊がありそうだが、葬儀と言う仕事が心底好きな担当者が対応してくれれば、知識も増え、納得して料金も支払える。

一方のS社は、近所だからいつも通りがかりに見ていてよくわかるそうだ。毎朝道路の清掃をしているが、アルバイトだろうかダラダラとしていて義務的に見え、こちらが挨拶をしてもあまり反応がなく、教育も行き届いていないという。中をのぞくと、広いフロアに人影は見えず、相談しようにも遠くまで呼びに行き、接客中なら所在なく待っていなければならない。これはお金を出す側にとって、決して気持ちのいいものではない。自分の時も最初に訪れたが、やっとつかまえても、とりあえずパンフレットを手渡され、一連の説明をされ、聞かれたことに答える程度で、客を安心させ又、喜ばせるようなプレゼンテーションもなく。葬儀と言う目的は果たせても、気分の高揚感や感動は望めないと感じたという。

その後A社を訪ね相談したところ、自社の特徴や情報はもちろんのこと、各組み合わせの相違や、今までの経験など、広告では知りえない情報、加えて広告の読みこなし方といったノウハウも提供されたという。そんな担当者なら、多少の価格差はサービス料として受け入れられる。2度目の時、当然思い浮かぶのは安さ、近さのS社ではなく、親切な社員がいるA社だったという。店側からいえば、リピーターの獲得だ。

そうなると興味が湧くのが、両店の売り上げに占める販売関連費用の割合だ。さまざまな業界に共通していわれることに、「1対5の法則」がある。既存顧客に再来店させるコストが1万円と仮定すると、新規顧客を1人獲得するための広告コストは5万円。つまりこの法則は、新規顧客を獲得するより、リピート率を増やすほうが低コストで売り上げをあげることができるということを表す。会計の視点で見れば、リピーターが多いほど、売り上げに占める販売関連費用の割合が低くなり、結果、営業利益率が高くなる。

A社の社員の説明が丁寧で信頼できる理由は、自社に愛情を持っているからだろう。その愛情は、経営者と担当社員とのコミュニケーションから生まれる。
友人が選んだA社は、お客様の意見を積極的に聞こうとする姿勢がある。担当によれば、経営者が葬儀と言う生業に誇りを持ち、いつも熱のこもった話をするそうで、それは社員を通じてお客様に伝播する。必要なものが揃っていて、気に入れば買うというのが今の消費者であり、選択肢には限りがない。買うか買わないかという二者択一の旧態依然とした売り方では消費者の心を動かすことはできず、仕事に対する愛情、物語があってこそ、消費者の気持ちをつかむ売り方ができるものだ。
「家族葬」なども同様で、消費者との接点である現場を大事にしてこそ、現場から消費者のニーズがフィードバックされ、市場に合った内容の開発が可能となる。価格や経営の効率性だけ考えていても、売上高上・利益率向上につながらないことは確かだ。

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