コラム~阿難の耳~

葬儀のベテラン

以前、九州のある地方都市の葬儀社さんで社員研修をしたことがあった。「葬儀の現状と未来」という話をしたとき、葬儀歴40年という大ベテランの部長さんが“所詮都会の話だし、地方はまだまだそんなことはない”と周りの社員さんたちに呟いていたのが聞こえてしまった。一応、一年の半分は各地を回ってその現状を見聞きし、それを踏まえたうえでお話をしたつもりだったが、どうも納得がいかなかったらしい。

ベテランという言葉には総じて良いイメージがある。「ベテラン=職人肌の人」と言えば、まじめに一つのことに対してコツコツと追求する人のこと、私もそういう人が大好きだ。特に最近は「望みは高いが、実行力がない」というような人が多いので余計に職人という言葉にひかれる。

しかし、世の中の理屈には絶対的なものはなく、皆さんも最近「世の中の価値観」が大きく変化していることは、生活の中でさまざまに感じているはずだ。葬儀も例外ではない。今までの葬儀はそのベテランという人たちが支え作ってきたのも事実だが、それでは、知識と経験のあるベテランがいれば成功するのか?答えはNOである。すべての人がそうではないが、ベテランがほとんど持っていない、又陥りやすい欠陥がある、それは次のようなことが多いと思う

・世の中(お客様)の価値観が変わっているのに、過去の成功体験を踏襲しようとする。
・お客様の効率や利益を優先せず、自分たちの能率や効率を優先してしまいがちになり「相手の立場を忘れてしまう」。
・どんなお客様にでも対応できるようにと、「平均値的な構築」をしようとする。誰からもクレームは来ないが、反面誰からも支持されない物になってしまう、没個性。差別化とは無縁の方向へ進んで行く。
・「今の若い人の教育」をベテランにしろと言っても無理なことが多い。今のベテランたちも又ベテランの先輩のやりかたを見ながらそれを盗んで覚えるという形が多かったので、教育を受けてこなかった人に教育しろと言っても、自分が教えられることを体験していないから、無理がある訳だ。
そして、これらこそサービス業にとっては致命的な欠点になる。

リコール問題等いろいろあったが、それでも現実にトヨタ自動車が世界のトップメーカーになっている現在、その従業員も工場も市場も殆ど日本以外にある。名実共に日本発のグローバル企業で日本の誇りだが、日本の職人だけに頼ったら今日はあり得なかった。
反対に衰退の一途を辿っているアメリカの某メーカーは職人に頼っている部分が多いそうだ。単一の車を生産する工場が多く、その中で単一の作業に特化した工員も多いと聞いている、結局高度成長時代には良かったが、変化が必要な時に対応が遅れてしまった。

今、業績の良い葬儀社は、新規参入か、経営陣の中に他業種から来た人がいるところが多い。それは、彼らが昨日までは「葬儀」の素人で、逆に「お客の立場」の人たちだったからと考えるのはあながち間違いではないような気がする。

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