葬送ルネサンス

現在、各種メディアやインターネットなどの情報機関の発達により、人々のライフスタイルは急速に変化している。その中にあって、人生の最期を荘厳する「葬儀」にも、近年、様々な変化が起きていることはご承知のとおりである。そうした変化への対応を含め、「従来の葬儀様式に満足しない人々が、今、葬儀に求めているものは何なのか?」を考察しつつ、「故人と遺族が満足できる新しい葬儀」を皆様と一緒に考えていきたいと思っています。  (宇佐美 義昭)

第一話 新しい葬儀の潮流

1.情報のオープン化が進む葬儀業界

昔の人は、紅葉に染まった木の葉が一枚、落葉するのを見て天下の秋を知ったという。生活にゆとりを感じさせるのどかなエピソードだが、スピード化がますます進む現代社会では、「そんな悠長なことは言っていられない」とお叱りを受けそうである。だが社会の片隅の小さな情報の中には、大きな変化を予感させる意外な真実が隠されているものである。
筆者はよくNTTの職業別電話帳「タウンページ」を利用する。読者の皆様もよくご存知だと思うが、手近な情報ツールとしてタウンページはなかなか便利なものである。職業別電話帳であるから、その中にはもちろん「葬祭業」のページもあり、そこには各地域の葬儀社の電話番号と共に、多種多彩な葬儀社の営業広告が掲載されている。どれも工夫を凝らした内容で興味深いが、ここ数年、そうした営業広告の中に、従来とは違った内容のキャッチコピーを目にすることが増えてきた。「葬儀に関するご相談を承ります」「葬儀社選びをお手伝いします」といった主旨の広告で、名称も一般的な葬儀社と一線を画す「葬儀案内センター」といったものが多い。筆者にとって、これは少し気にかかる内容だった。
さらに今、大流行のインターネットを覗いて「葬儀関係」の情報を検索すると、タウンページの広告と似通った「○○○○サポートセンター」というホームページが見つかった。運営者は葬祭業の関係者ではなく、あくまでも葬儀に関して「個人・遺族の立場に立った情報を提供すること」を目的に開設されたホームページらしく、調べてみると月にかなりの件数の依頼があることもわかった。これらはいったい何を意味しているのであろうか?
この2つから筆者が感じたのは、社会全体に浸透しつつある情報オープン化の波が葬儀業界にも着実に押し寄せてきているという感触である。先に述べた「情報機関の発達によるライフスタイルの変化」が、お客様の要求としてまず「葬儀というものをもっと知りたい」という状況を生み出していることは間違いなさそうであり、それに応えようとする変化も全国各地に様々な形で生まれつつある。
そして今までの葬儀業界は、様々な社会的変化の影響を受けることが比較的少なく、今日に至っていると言えるだろう。ひとつには、葬儀業という業種が地域密着型のビジネスであり、他地域からの参入が極めて難しいため、歴史的な背景等による限定されたビジネスエリアが、安定した業績を保証してきたということが考えられる。また、「典型的な受注産業」という業界の特性が、積極的な営業活動や販路拡大を難しくし、結果として中小規模業者の「並立共存」を可能にしてきたとも推察される。
さらに葬儀業界を取り囲む現状を見てみたい。2010年の死亡者の累計は119万4千人であるが、2035年にはこれが175万5千人になるだろうと予想されている。つまり、誤解を覚悟で言えば「ビジネスフィールドは着実に広がっている」のである。事実、種々のアンケート調査では、多くの葬儀業者の方々が「仕事はそこそこある」と答えている。さらに自社で執り行った葬儀に対しては、「お客様から御礼をいただいた」というような声も聞かれ、業界全体としてはさらに安定した状況が続くと考えてもおかしくない。
それにも係らず、業界全体が「葬儀業界を取り巻く環境は急激に変化していく」と予想し、すでにそのための準備に取り掛かっているところも少なくない。そしてその背景にあるのが、「情報オープン化の波」であることは間違いない。筆者のもとにも様々な相談が寄せられるが、少なくとも「どう変わっていくか?」というおおよその道筋は見えており、次の段階として「そのために何が必要か?」あるいは「それをどう実行するか?」という課題に取り組みつつあるのが、現在の状況ではないだろうか。そしてその基本となっているのが、「多様化するお客様のニーズにどう応えていくか?」というキーワードである。

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