葬送ルネサンス

第一話 新しい葬儀の潮流

3.フューネラルプロデューサーの必要性

筆者が初対面の方に自己紹介をする際、「葬儀関係業界へのコンサルティングとフューネラルプロデューサーをしております」と言うと、コンサルティングは分かってもらえるがプロデューサーに関して「どういうお仕事ですか?」と質問されることが多い。「葬儀のプロデュースをする仕事です」と答えると「葬儀をプロデュースする?」と首を傾げられ、理解していただくのはなかなか大変である。筆者が自分で手がけた「音楽葬」や「社葬」、さらにオリジナルの祭壇やモニュメントなどを例に説明をすると、ようやく納得してくださるが、それでも「葬儀にプロデュースが必要なのか?」という疑問は残るようだ。一般の方々にとって、葬儀はまだまだ「決められた手順に従って行われるもの」というのが常識的だということなのだろうか。

今後の葬儀のあり方について
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しかし、そうした認識は徐々に変わりつつある。以前に、元宝塚のスターが「生前葬」を行ったことが話題になったが、芸能人や芸術家が従来とは違った形で「自分らしい葬儀」を行った様子がマスコミを通じて広く紹介され、それらに触発された人々の間で「いままでの形式にとらわれない葬儀」が徐々に執り行われるようになってきた。葬儀情報のオープン化が進む中で、それに応じて積極的に情報を提供しようとする動きも見え始め、その結果、葬儀に関する情報はこれまでになく豊富に幅広く公開されるようになってきている。そうした中から、先にも述べたような葬儀に対する様々なニーズが生まれてきたのである。

社会の葬儀に対する意識の変化に、葬儀業界も様々な対応を模索している。葬儀先進国のアメリカでは、消費者保護の立場から葬儀ビジネスにも適正な価格と情報公開を求めて、1984年に連邦商業委員会が「The Funeral Rule」を制定した。主な内容は「電話での情報公開」や「単価の提示」「仲介料の提示」「選択の自由についての情報」「見積もり金額の提示」などだが、州ごとに「フューネラルディレクター」制度を制定し、葬儀社にはディレクターを配置することも定めている。

日本もそれに倣って、厚生労働省が「葬儀ディレクター」を認定している。「葬儀会場の設営」や「祭壇の設置」、「葬儀のスムーズな進行」などが認定の条件になるが、これらはあくまでも「葬儀の運営」に必要な知識や技術である。しかしこれまでに述べてきたように、現在の葬儀業者に求められているのは、画一化した葬儀形式に満足せず(個性化)、様々な情報を基に多様化するお客様のニーズに応え(簡素化など)、お客様の満足を得られる葬儀(納得性)を演出する能力(プロデュース力)なのである。その必要性については、これからさらに詳しく述べていきたいと思うが、情報オープン化の波に対抗していくためには必要不可欠なものであることは間違いない。そして、そのことを多くの葬儀業者の方々が認識し、そのためのシステムづくりや人材育成に取り組もうとしている。
またこうした状況を背景に、横浜市では老人会や町内会などと葬儀社の間に立って、様々なお客様の要望に沿った葬儀を「プロデュースする」女性が活躍している。この方は個人で活動されているようだが、幅広く役立つ葬儀情報を提供することを目的としたNPOの設立やインターネットによる葬儀情報の発信など、葬儀に対するニーズの変化にいち早く対応しようという試みも多方面で行われている。筆者は「その中心となるのがフューネラルプロデューサーである」と考えているのだが、これはあまりにも「手前味噌」だろうか? そう言われないためにも、今後様々な有益な情報を提供しつつ、少しでもお客様のお役に立ちたいと考えている。

葬儀に関する情報が氾濫するなか、お客様のニーズが多様化してきているのは事実であり、それは先にあげたアンケート調査にも顕著に表れている。しかしその中で、葬儀に対して「変わらない」と思われる結果もあった。それは「人を送る」という心の部分のようにも感じる。「形式にとらわれない葬儀」も良いが、葬儀をプロデュースする際、我々はこの心の部分を決して忘れてはいけないとも思っている。

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