葬送ルネサンス

第五話 葬儀ビジネスのサービス業としての特殊性

3. 葬儀の「満足度」を左右するもの

こうした現状を認識した上で、改めて葬儀におけるサービスというものを考え直してみたい。サービス業が提供するサービスの内容を分類すると、「機能的サービス」「時間的サービス」「情緒的サービス」の3つに大別できると先に述べた。
これをわかりやすくするため飲食業に当てはめて考えてみると、お客様に代わって食事の準備をしてそれを提供するというのは、調理という機能的部分を代行して行っている「機能的サービス」と考えられる。
これに「時間内にご注文の品を届ける」をキャッチフレーズにする宅配フードサービスのような要素が加わると、時間の短縮を兼ねた「時間的サービス」の要素も出てくる。
さらにインテリアや照明、場合によってはアトラクションなどを含めたレストランの雰囲気づくりなどは、好き嫌いなどの人間の感情的な部分に働きかけるサービス=情緒的サービスの部分になるだろう。
これら3つの要素が合わさって飲食業のサービスが成り立っているわけだが、葬儀業ではこの3つのサービスのバランスはどうなっているのだろうか?
葬儀業では葬儀の運営自体が機能的サービスと時間的サービスを兼ね備えていると考えられるが、葬儀における満足度を左右するのは最後の情緒的サービスの領域ある。サービス業における情緒的サービスの重要性は、サービスを提供する担当者とお客様との接触時間が長い業種ほど高くなると言われている。
葬儀の打ち合わせからお通夜、告別式の終了に至るまで、2~3日間を遺族=お客様と密接に係る葬儀業の担当者に求められているのが、この情緒的サービスの部分であることは明確であろう。

このことを少し角度を変えて考えてみたい。電気店に電球を買いに来た人がいるとする。その人は、一元的には電球によってもたらされる明るさという機能性を求めたと考えられるが、多元的に考えてみるとその明るさの下で行われる家族の団欒や憩いのひとときなども同時に手に入れることになる。
そして電球本来の機能よりも、そこから生まれるあとの部分の方が、サービスにおける満足度という点では重要な意味をもつことに異論はないだろう。近年、電気メーカー各社が単に「明るさ」だけではなく、日常生活の各場面での「必要に応じた明るさの提供」をコンセプトに照明器具の開発を進めているのは、まさにこの情緒的サービスの提供によるお客様の満足が重要だと気づいたからに他ならない。

葬儀業においては、祭壇、棺などを含めた葬儀施設の提供、およびそれらを使った葬儀の運営が具体的なサービスの提供になるわけだが、遺族=お客様がそれらのサービスを通して求めているのは、そこから伝わってくる心温まる雰囲気や感動である。
サービスの基本が「人の心に働きかける」ことであるとするならば、その手段として葬儀という形式やシステムがあるのだと筆者は考える。荘厳な祭壇や水際立った演出も、すべては「故人を送る」という心の表れであり、「故人を送る心」に動かされた時、その思いが参列者に伝わり、それが葬儀全体を感動的なものにするのである。そしてそれが遺族の方々の「葬儀を行って本当によかった」という満足につながっていくのである。

サービス業におけるサービスの良し悪しの判断は、お客様の個人的な感覚と過去の経験に大きく左右され、さらにサービスの満足度はお客様が支払う料金とのバランスによって決まると言われている。ここで重要なのは情緒的サービスの内容であり、特に葬儀業においてはその傾向が強い。そしてその鍵を握っているのが「人」であり、その人を通じて生まれる「コミュニケーション」であることは、もはや動かしがたい事実だと考えるが、いかがだろうか?
今後の葬儀業界での成功は、「個々のお客様をどう満足させられるか」にかかっている。筆者はそのために、「顧客対応」から「個客対応」への発想の転換が必要だと考えている。
具体的な対応としては、葬儀のシステム部分の標準化・規格化によりコストを下げた分で、「細部での個別化」を図るべきである。
その第一歩として、「人材育成」のためにもっと積極的に投資すべきだ。これにより個々のお客様のご要望に細かく対応することが可能になり、それがお客様の満足、ひいては葬儀業界内での差別化につながると確信する。

最後に、「自分が感動していなければ人を感動させることはできない」という言葉を紹介したい。サービスの原点もそこにあると筆者は考える。葬儀業者が「故人を送る」という仕事に誇りをもち、自分たちが執り行うひとつひとつの葬儀に感動できるようになることこそ、葬儀における満足度を高めるためにもっとも必要なのではないだろうか。

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